夜更かしをする

いっちばん しゃばけシリーズ 7

いっちばん しゃばけシリーズ 7

餡子は甘いか

「俺は下手だ。本当に下手だ。それは、嫌と言うほど分かってる」でも、菓子を作るのを、止められないと思う。だから、人からいかに悪し様に言われようが、菓子作りを止めない。もし三春屋を継いでも、買いに来てくれる客がいるかどうかは分からないが、止めない。食って行くためには他に仕事を持ち、菓子は趣味のようにして作るしかないかもしれない。それでも栄吉は一生菓子を作っていくだろうと、己で確信を持ったのだ。

何度読んでも此処で涙が目のふちにみるみるうちに盛り上がってきて止めることができない。それで

「栄吉、お客さんは、美味いと思って気に入った菓子を、贔屓にしてくれるんだ。職人が、修業何年目でその菓子を作れるようになったかなんて、誰も気にしちゃいねえよ」才ある者が三月で作れるようになったものを、三年で習得しても、客は文句を言わない。買った菓子が美味しければ良い事だからだ。それにと言い、虎三郎は栄吉を見る。「何事に付け、やり続ける事が出来ると言うのも、確かに才の一つに違いないんだ。お前さんには、その才がある」

ここで追い打ちをかけられる。なんとも。罪な。