女の子ものがたり

「何も見ないで 何も聞かないで 何も知ろうとしないことは とても恥ずかしいことでしょう。」

なっちゃんは旅立つ女の子の終わりのない道を描く。道はどんどんのびていく。ふらりとたばこを買いに行ったきり帰ってこないお父さんが幾度となくなっちゃんに言ってたことば。お前は何か違う、人と違う人生が送れる。そういってお父さんは必ず頭を撫でてくれた。私は幸せ私は幸せ私は可愛がられてる。呪文を唱え続けてた子供時代。駆け足で大人になるしかなかったみさちゃんは高校生の頃から大人になったら結婚して子供産んでスーパーのレジでバイトして、旦那の自慢は知り合いがやくざ!けらけらと楽しそうに笑うの。一生言うわー。そしてそのまんまの未来がやってきて。彼女たちはわかっていた。広くて大きな緑がいっぱいの自然に囲われた閉塞感とそこでどう生きるかを。旦那に暴力をふるわれる彼女たちをなっちゃんは幸せとは思えない。でもきいちゃんもみさちゃんも幸せやと言う。わたしは不幸とは思てへんよって。それで、きいちゃんは幸せ、みさちゃんも幸せって呪文、なっちゃんはいっぱい唱えるけれどいくら一生懸命唱えてもみんな幸せになられへん。きいちゃんは言う。幸せってなに?不幸ってなに?そんなんどうでもいいやん。でも、なっちゃんはそうは思えない。わたしはあんたらみたいな人生送りたない!

あんたはうちらとは違う。あんたなんか、友達でもなんでもない。この町から出ていけ。ほんでもう帰ってくんな。

泥にまみれて殴りあって、えぐるような強い言葉で背中を押す ともだち。きいちゃんの瞳は強さと哀しみであふれて、なっちゃんのこと大好きって言ってた。あんたはうちらとは違う。だから。こんなところでとどまってはいけないのだと。かけがえのないともだちのことを思い出してなっちゃんはまた果てのない道を歩きだしたんだね。