逃がした小鳥が帰ってくるというのか

太宰治短編小説集vol.2。NHKおもしろいなーって思うのはこういうとき。うっかりと。最後までずるずる離れがたくなるのよ。去年のvol.1もそうだったわ。

第1夜のメロスは、よかった。みーくんに泯さんってだけでもちろん観るつもりだったのだけれど、びっくりした。そのおもしろさに。心底。スピーディーでスタイリッシュ。斬新な映像、音楽も良い。能でも舞いそうな舞台の上、あでやかに雅やかな障子の中の市のひとたちの間を黒スーツの未來くんが。コンビニ袋にはワインやら野菜やら。泯さんの語りが 色っぽくあやしげで、確かだ。そしてメロスの激怒の下睫毛。の強さ。準備体操でみせるしなやかな開脚、ただただ走る身体の美しさ。良い声で歌い、ぶらぶらと歩く描写はみーくんだとバレエのそれ。無重力感。泯さんの暴君ディオニスの黒装束の美しさよ。 深く刻まれたしわや残虐な瞳の美しさよ。それから画面はメロス。大蛇の波にざんぶととびこんだあとの翻弄される身体の躍動感。王の陰謀の暴徒たちを正義のためにと一気に片付け、安心せい峰打ちじゃ的にバッドをさやにおさめる姿なんて凛として、そしてくすくすと。なのに、力尽きて、芋虫の真っ黒な瞳をこちらにむけるからぞくっとして仕様がない。半裸でのネクタイだけがただただ不満。ネクタイをゆるめて投げ捨てる姿も見てみたかったと思うから。
他に女生徒(好きな作品だっただけに、すこしがっかり。やはり、少女という記号、もしくは装置は難しいのかしら)と雪の夜の話(田畑さんの朗読が思いのほかさらりとすてきだった。美しいことば)今日は津田さんの「犯人」。