Romeo and Juliet

誰の訳がよいのだろう?とうろうろしていたはずなのに金子さんを発見してしまってうっかりととりこに。それで思わず。だって手に取ったらもう手放せなくなったんですもの。

新訳 ロミオとジュリエット (角川文庫)

新訳 ロミオとジュリエット (角川文庫)

すっかりと泣かされてしまって。わたしの眼はこの新訳の日本語を追っているつもりなのに。浮かぶのはブリーゼでまっすぐな恋をしたロミオとジュリエット
それは、振り向き様「恋!」と恋に恋する浮かれたロミオのきらきらと輝く笑顔だったり。もじもじと訊く「ねえ、俺ってハンサム?」にそうでもねえよとおちょくられて*1ずりずりと芋虫のようにはいずって女の子たちの膝で泣くロミオだったり。プロポーズ練習中のティボルトの「ハーイおじさん。ジュリエット、僕にくれない?」(だいすき)ジュリパパとパリスさんのチークダンスのような政略結婚談義も。「おっぱいに突撃―!」と出かけた仮面舞踏会で青い光で照らされたふたりがひっそりと周りが見えなくなるほどの恋に落ちる瞬間のときめきだったり。はじめてのキス。それから「いま、なにしたの?」「わかんないよ」「ねえ!」「唇と唇を」「どうして。唇は祈りのためにあるのよ」とぐるぐるとおいかけっこ。俺はそんなこと習ってない!でもこう思ってる。もう一回したいって・・・いい?と甘く問いかけるロミオから逃げるように背を向けて、それからドレスをたくしあげ雄雄しくいいわ!とこたえるジュリエットだったり。お互いの正体を知ってしまったあと、仲間から隠れてひとりジュリエットのもとへ行くところの「ロミオくぅーんハンサムなロミオくぅ〜ん?」ベンの問いかけに隠れながらおおきくはーい!ってお返事しているロミオとか。熱ならもう出ているわあってきゃあきゃあとじたばたしているジュリエットの恋心にバルコニーから呼びかけるのはロミオ。「それかんしゃく玉だろ?やめなさい」(←すき)月に愛を誓うロミオに、だめよ。月にかけて誓っては。月というのは毎日、形が変わってゆくのよ?って屁理屈をうれしそうに並べるジュリエットも。使えない月!ってごろんって回転するロミオも。そうして自分自身に誓って、明日、結婚しよう!と手と手をとりあう幼いふたりの本気の恋にも。いつも健康で幸せでいてくれないと。君はもう僕のものでもあるのだから。あなたはわたしのもので君は僕のものなの。僕の夢なの。

  • 俺は船に乗れるんだ金銀財宝船いっぱい面舵いっぱいいつか持ち帰ってモンタギューのため親友のため・・・と果てていくマキューシオも。くたばれモンタギューもキャピレットも・・・悲痛な最期を自ら選ぶティボルトも。見てごらんジュリエット。おまえは本当にかわいいよ。この本の中にいないはずの彼らの姿がひどく鮮明で哀しくて愛しくて。
  • お花のようなお顔の裏に蛇のこころが隠れていたなんてああおそろしい!それでも・・・ティボルトを殺したあのひとをまだ私は好きで・・・心配でどうにかしてあげたいと思っている。心臓から血が噴き出てしまいそう。胸が痛くて息ができない!苦しいわバリヤ。ロミオ様に会いたい。小鳥のような小さな胸を震わせてたのに。身体を縮め泣いているロミオを背後から抱きしめるジュリエットの華奢な腕がとても大きくて優しくて強くて。
  • それから幸せな未来の話。結婚しても俺きっとモテるし、先に謝っとくごめんって。これから何したい?「ありすぎて言えないわ」って笑いあって、雲雀の声に朝の訪れを知って。あれはナイチンゲール、朝を告げる雲雀じゃないわ。だからまだ行かなくていいのよ。そうだね。君が望むのならずっとここにいるよ。まだ朝はこないのだから。いいえ、いいえ、やはりあれは雲雀…朝が来ます…さぁ、あなた、早く行って。しがみつくようにかわす最後のキスが苦しくて悲しくて。なんでずっと一緒に居させてあげられないんだろうって。ほんとうにほんとうに。あんなにあどけないのにどうして。
  • ジュリパパのジュリエットへの深い思いにもまた。娘を想う親のこころがまた一歩彼女を死に近づけたの?
  • ただの民です。愚かな名もなきただの民です。
  • 悔いています。うっかりと人を愛し、死へ追いやってしまったことを。人を愛して愛しきれず、友をかばってかばいきれず、自分を憎んで憎みきれず。悔いています。
  • うっかりと人を愛し、死へ追いやったのは私も同じ。ただの民なら放っておいてもよかろう。パリスさんの男気もまた。皆が皆、優しくて少し馬鹿。すれ違っててやりきれない。
  • まず歩きます。あなたと2人ゆっくりと。ずいぶんつまらないとお笑いになるかもしれません。でも、ただあなたと歩く。それが私の夢なのです。
  • 妻です。夫がお世話になっております。
  • ジュリエットの声でないいろいろな声が彼女の溢れる想い、愛情をつむぐからさらに涙がこぼれるのに。歩こう、君が望んだ夢の通り。思わないよ、つまらないなんて。どんなにそれが幸せで、かけがえのない、叶わぬ夢か、俺はよく知っているから。とってもやわらかい声でロミオが言うから。
  • まっていてねわたしのあなた。怖くないわ。もうすぐあなたに会えるのだから。きらきらと美しい短剣を胸に突き刺すその横顔が凛としていてそれがひどく怖かった。
  • 階段をのぼっていくふたりはとても美しくて、だからこそ異常。美しすぎるの。それは十分おかしなことで。死に急ぐわかい恋人たちのみずみずしさはかなさをより一層引き立てた。彼と彼女の毒薬のように鮮やかな恋を。


どうがんばってもうまくことばにできない。ただ幸福で切なくて悲しくてやりきれなくてそれでもやっぱり幸福だったのです。

*1:おともだちったら、マキューシオのこと「あの股間のひと、すごくよかった」ですってwww